ブリーダーとはどういう仕事なのか?ブリーダーの問題点とこれからペットを飼う人に知ってほしいこと
近年、ブリーダーという職業に対して多くの問題点が指摘されています。
また、数々の痛ましい事件が起きており、その内容を見ると本当に胸が苦しくなります。
ここでは、ブリーダーとはどういう仕事をしているのか、ブリーダーという職業の問題点について考えていきます。
ブリーダーとは何をする仕事なのか?
ブリーダーというのは血統書がついている種類の犬や猫を繁殖させ、ペットオークションや直接販売する仕事になります。
日本ではブリーダーになるための資格などはありませんが、繁殖させるためには遺伝について知識がいりますし、販売までの飼育には健康管理、食事管理、体調チェックなどのさまざまな医学的知識が必要になります。
さて、今さらりと言いましたが、日本ではブリーダーになるために、国家資格などの特別な資格は必要ありません。
欧州などのペット先進国では、ブリーダーは専門性の高い職業であると考えられていますので、仕事をするためには専門の資格を取得する必要があるのですが、日本ではそういった制度はまだ設けられていないのです。
ただ、動物を販売するためには「第一種動物取扱業者」として登録することが必要であり、専属の動物取扱責任者を1名以上、事業所ごとに配置することが義務付けられています。
そして、令和2年6月1日に改正された動物愛護管理法より、動物取扱責任者になるためには以下の要件が必要になります。
>東京都保健医療局
- 獣医師の免許を取得していること
- 愛玩動物看護師の免許を取得していること
- 実務経験(種別に係る半年以上の実務経験または実務経験と同等の1年間以上の飼養経験)及び種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校等を卒業
- 実務経験(種別に係る半年以上の実務経験または実務経験と同等の1年間以上の飼養経験)及び公平性、専門性のある団体が行った試験により資格等を得ていること
ちなみに上記リンク先にある「動物取扱責任者の選任要件が厳しくなりました」という文言に私は違和感を覚えます。
このように動物愛護管理法の改正により、動物を取り扱うことに対してより一層の責任感を求められるようになってきています。
近い将来にはペット先進国のように、ブリーダーなるには専門の資格を必要となる社会がくるのかもしれません。
ブリーダーの問題点
きちんと責任感をもち、命を扱うことの大切さを十分に理解し、信頼のおけるブリーダーであれば何も問題はないのですが、中には悪質なブリーダーというものが一定数存在します。
過剰繁殖や劣悪な環境での飼育など、利益ばかりを追求し、とても動物たちのこと考えているとは思えないブリーダーがいるのも事実です。
過剰繁殖による多頭飼育崩壊
利益を追求するあまり、需要量を超えて過剰に繁殖を繰り返し、多くの売れ残りが発生することで、飼育崩壊を引き起こすといったことが起こっています。
200匹以上のワンちゃんを飼育しており、病気やけがのワンちゃん10匹に対して、適切な保護を行わなかったとして逮捕された事件がありました。
動物虐待の疑いでブリーダーの女逮捕 杉本彩さん代表の団体が告発
>ktv.jp
また、過剰繁殖でなくても、ブリーダーが高齢になったことで育てることが難しくなり、飼育崩壊に繋がるケースもあります。
多頭飼育崩壊は、ブリーダーでなくても、避妊・虚勢を行わない家庭などでたびたび起こる問題でもありますが、動物を取り扱う責任を負うはずのブリーダーがこのような飼育崩壊を起こすのは、一般家庭以上に問題があるのではないでしょうか。
劣悪な飼育環境によって動物の健康に影響を与える
これもブリーダーによるのですが、狭いケージや限られたスペースなどの劣悪な飼育環境で育てるブリーダーが存在しています。
これにより、動物たちは十分な運動ができず、筋肉や骨の発達が不十分になることがあります。
また、運動不足からくるストレスが蓄積し、攻撃的な行動や不安症状を引き起こすことがあります。
そして、多頭飼育により清掃が行き届いていない場合、ケージや飼育スペースは糞尿で汚れ、不衛生な状態になります。
寄生虫や細菌感染が広がりやすくなることで、動物の健康に深刻な影響を及ぼし、皮膚病や消化器系の疾患などが発生しやすくなります。
このような劣悪な飼育環境で飼育された動物は、身体的な健康問題や行動問題を抱えることが多く、動物たちの将来に深刻な影響を与えます。
なぜ悪質なブリーダーがでてくるのか
なぜこうも問題のあるブリーダーがでてくるのか。
それは今の日本の法体制がペット先進国に比べると数段遅れており、ペットを命ではなく物として扱うような風習がいまだに残っていることが主な原因だと思います。
ペットショップとブリーダーの関係性
ペットショップは多くの動物を販売し、安定した供給を求めています。
これが悪質なブリーダーの活動を助長する一因となっています。
大量生産を優先するために、ブリーダーは動物たちの福祉を無視し、劣悪な環境で飼育することがあります。
ペットショップとブリーダーの関係性についてはこちらで記事にしています。
ぜひ一度参考にしてみてください。
なぜペットショップで犬・猫を買わないほうがいいのか?
>ねこしろっぷ
所有者の許諾なしに救助ができない
現行法では、動物の所有者が同意しない限り、外部の人間が動物を救出することが難しいです。
これにより、劣悪な環境に置かれた動物たちを即座に救うことができず、結果的に問題が長引くことになります。
問題を起こしても刑罰が軽い
日本の法律は動物の保護に関してまだ不十分な面があります。
動物虐待や劣悪な飼育環境に対する刑罰が軽いため、悪質なブリーダーが法を恐れずに活動できてしまいます。
また、法の執行が厳格でないことも問題です。
まとめ
悪質なブリーダーの存在は、ペットショップとの関係性、法の不備、そして動物所有者の許諾問題が絡み合った複雑な問題です。
これを解決するためには、法の強化と厳格な執行、そして消費者の意識向上が不可欠です。
もちろんこういった悪質なブリーダーだけではありません。
動物の健康と福祉を最優先して適切なケアとおこない、また、購入者に対して飼育方法や健康管理のアドバイスしてくれるブリーダーもいます。
動物を迎える際は、信頼できるブリーダーや保護団体を通じて、健康で幸せな生活を送れるような環境で育った動物を選ぶことが重要です。